沙門空海唐の国にて鬼と宴す

全巻読み終わりました。
あの分厚さで4巻もあるから結構かかっちゃうと思ったけど、思ったよりもさくさく読めました。
天才空海という人物の面白さに引っ張られ、気付けば黒猫の怪異、楊貴妃の謎とぐいぐいと物語に引き込まれていきました。この謎が解けるまでは止めてなるものか! って勢いです。
当時の唐の時代背景や密教に関する説明も、さらりと分かりやすく説明してあって、中国史音痴の私でも難なく物語に入り込めました。
久しぶりに読み応えのある長編作品を読ませて頂いて大満足!


ただ、ひとつ惜しいなぁ、と思ったのが橘逸勢について。
結局彼はなんだったのかなぁ……って、読んだ後に思ってしまったりして。あまりにも情けない感じで終わってしまってたもので。
多分「沙門空海〜」を読むと、誰もが空海と逸勢に「陰陽師」の清明と博雅を思い出すのではないかと思います。
私の手許に「陰陽師」がないものでおぼろげな記憶で申し訳ないのですが、夢枕獏先生が「陰陽師」のどこかのあとがきで、博雅は清明にとってブラック・ジャックピノコのような存在というようなことを書かれていて(もちろん、見かけの事ではない!/笑)、そうだなぁ、ってスゴク納得した記憶があります。
「沙門空海〜」を読むと、逸勢の立場って、多分そういう場所に置かれようとしてたんだろうなぁ、と思われます。
ふたりの会話の様子だとか、逸勢が空海の住まいから去った後も空海は自分の中に逸勢を作ったりして、多分空海以外の人から見れば、あまり役に立ってなさそうな感じの逸勢だけど(失礼!/笑)空海には必要な人間なんだろうなぁ、ってなことを思いつつ読み進めていたのですが、後半、どうも逸勢の存在がないがしろになっているような気が……。
納得してたはずなのに、途中でなんでこの人と空海が一緒にいるんだろう? って、改めて疑問に思ったりして。
逸勢の存在だけが解決してない謎のようで納得いきませんでした。
せっかく素敵な関係を築かれているんだから、最後まで丁寧に書いてほしいなぁ、とか。
まあ、「沙門空海〜」を読んだ人のなかでこんなことに拘ってるのは私くらいか(苦笑)。
すみません、そういう性なもんで……。


まあ、そういう下らない拘りはあったとしても、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」、なかなか読み応えのある作品でした。
ごちそうさま。